彼処に、如何に。







 朱美の手で砂浜に叩きつけられ、何処かに消えた髑髏。

 帰った、海へ。

 彼方を見つめる朱美の眼差し。

 この手に還っても時は絶えず流れていて、今更という言葉に、その手中にある意味を失う。

 朱美の叫び声に伊佐間は目を見開く、長い長い時間の流れがそれで止まることなどないのだ。

 彼方を見る朱美の眼差しは穏やかな微笑で彩られ、その口元は屈託もなく笑っていた。



「京極堂、伊佐間さんから手紙がきたよ」

 関口がそう言って京極堂を訪ねてきた。

 手紙にはあの髑髏のその後が綴られていて、京極堂と関口は無言になる。

 あの、髑髏。

 朱美にとっては一体何が大事なものだったのか。

 朱美は思いの丈を言の葉に、その髑髏を砂浜に投げつけた。

 長くトラウマとして残った思いが言葉となって。

「憎しみの方が、勝ったのか……」

 取ってつけたような言葉を関口が呟いた。

「関口君、憎しみなどそう易々言葉にするものではないよ」

「なんだい、僕に呪をかける気かい?」

「そんなつもりはないが……気をつけたまえ。君は、そういったことにとても傾向するタイプだろうから」

 京極堂はそう言って出がらしの茶を口に運ぶ、関口はその言葉に「そう言ってるも同じじゃないか」と

呟くと干菓子の入った壷を見つめた。

 何処から見ても骨壷に見えるそれをぼんやりと眺める。

「僕は、好きな人の骨なら一生手放せないよ……」

 どんな形になっても、それはその人の一部。

 どうしたって離したくない。

 関口はそう呟くと、何か答えを求めるように京極堂を見た。

「それによって苦しめられても、それでもかね?」

 問い返すような形で、京極堂は関口に切り替えす。

 関口は、やはり……と言った風に無言で頷く。

「それでも死んでからようやく、手に帰ってきたんだ……」

 大きなため息をつくと京極堂が呟く。

「関口君、やはり君はそういったことに傾向するタイプだな」

 そういったことの意味を、邪気なく求める。

 それはある意味無邪気ともいえるが、邪気がない分、執拗な妄執に近いとも言えよう。

 愛しいものとか、離せないものだとか、そればかりでは多くの時間を経ても、たどり着く場所は迷いの

始点でしかない。

 想い人のその眼差しに気付かず、関口は自身の抱く想いに大きなため息をついた。


 加筆修正 2007.7.20








 どんな人でもいつか必ず荼になります。

 そうなっても手放したくない、いや、今までがそうさせない。

 どうなるか、彼処に、如何に。


 原作ベースで数年前に書いたのを手直ししてUPしました。

 短いし抽象的な話ですが、書いた本人は結構気に入っています。

 考えたら初伊佐間氏でしたが直接的な会話がない…(汗)