物事に例外はつきものだ |
夜勤明けの泥のような眠りからようやく目覚めた木場は、朝食兼昼食を食べ終え番茶で一息ついていた。 溜まりに溜まった洗濯物を干してしまった今、何かする予定もなくのんびりとした休日を些か持て余している。 京極堂へ行ってわざわざ毒舌を拝聴する関口を見習うには疲れているし、かといって梅雨の晴れ間の気持ちいい晴天に何もしないというのはもったいない。 根っからの貧乏性と言うべきか。 暇つぶしにと買ってあった雑誌を何とはなしに捲ってみる。 適当に見繕ってくれといったら妖怪関係の本を手渡そうとした京極堂に泣きを入れて手に入れた雑誌ではあったが特に気になるような記事もなく、平和を謳歌している若者のアンケートや意見が大きく取りあげられているばかりだ。 暇をつぶせるようなものはなく退屈さに眉間に皺が寄る。 「・・・かといって、小難しいのはなぁ」 呟いて捲っていると乙女心特集と銘打ったいかにもな頁を開いてしまった。 (好きな人とならどんな些細なことでも分かちあいたいの) 「そんなもんかねぇ?」 雑誌にツッコミをいれている時点で独りが永すぎたかと気恥ずかしさというか照れを含んだ笑いが出てしまう。 きゃらきゃらと歩く子供は、無骨を絵に描いたような自分には荷がかちすぎる。 雑誌を閉じて、畳に寝転がるとぼんやりするのも一興かという気持ちが起きないでもない。 昼寝でもと瞳を閉じた瞬間―――――――― ダンダンダンダンダンッ 戸を叩き壊すかのような振動に木場は、すわ何かの呼び出しか襲撃かと手近にあるシャツを着込み身構えた。 「木場シュウ〜ッ。トーフ男ォッ。あ〜け〜ろ〜ッ」 直後に聞こえてきた声に木場は喜劇役者並みに滑った。 「あんの馬鹿・・・」 畳で擦った肘を庇いながら戸を開ける。 「うちの戸はぼろいって言ってあるだろがっ」 木場の一喝など聞いていない綺麗なビスクドールはずいとガラスの器に入ったセピア色のなにがしかを突きつけた。 「な、なんだ?」 「これを食べろっ」 「・・・・・・ものは何だ?」 「しのごの言わずに食べるんだ」 見た目的に言っておそらく珈琲ゼリーだろうが、一つ問題があった。 「おい、これ食いかけじゃねぇか」 「い・い・か・ら・食・べ・ろッ」 食いかけであることから推測するに毒ではないだろう。 悪くても食中毒で腹を下すだけだと判断した木場は、有無を言わさない榎木津に折れたかたちでそれを口にした。 「・・・ま゛ずっ・・・」 思わず発音に濁点をつけてしまいそうなぐらいな不味さに目眩を覚える。 珈琲を煮詰めたとしか言いようのない苦さとカラメル焼きの失敗作のような苦い甘さが化学反応を起こしたような不味さに言葉がでない。 「うわははははっ。僕だけ不味いのは嫌だからな」 悪戯が成功したと笑う榎木津に殺意が閃く。 しかし、あまりの不味さに台所に走った木場は、水道の蛇口から直に水を飲んで不味さを流し込んだ。 (好きな人とならどんな些細なことでも分かちあいたいの) その脳裏に先ほどの記事が浮かぶ。 分かちあいたいってのはこんな事まで含まれんのか!? 記事を書いた記者に八つ当たり気味に心の中でつっこむ木場の姿が哀愁を帯びる。 とりあえず暇ではなくなったが、被害が大きすぎて黄昏れる木場に幸あれ。 -おしまい(^^*)- |
匿名希望さんから頂きました榎×木場のSSです。 なんとも言えないこの不協和音が堪りません!! 管理人一同、不幸(?)な木場シュウに喝采を送ります。 匿名希望さん、ありがとう御座います〜〜vv |